私たちの心と体は常に変化し、さまざまな形で影響し合っています。
体の調子が悪い理由が心のストレスにあったり、心がしんどいと感じる原因が体の不調だったという経験を、あなたもしたことがあるのではないでしょうか。
このように、密接につながっている心と体には、実際にはどのような関係があるのでしょう。
今回は、心と体に関する3つの考え方と、不調がある人に訪れる心と身体のサインを解説していきます。
心と体の考え方(1)ボディーマインドシナジー
多くの心理学者にとって、長年の研究対象である問いがあります。
それは「心と身体は別のものなのか、あるいは同一のものなのか」という問いです。これは「心と身体は、互いにどのように影響し合っているのか」という疑問にもつながっています。
一部の心理学者は「心と身体は同一のもの」と考えています。この考え方を一元論と呼びます。一方、「心と身体は別のもの」と考える心理学者もいます。
その中でも「心と身体は別のものだが、互いに影響しあっている」という考え方を持つ心理学者がいます。彼らが支持しているのが「ボディマインドシナジー(心と身体の統合)」で、これはデカルト的二元論に沿った考え方です。
ボディマインドシナジーとは、「思考は筋肉の動きに影響を与え得る(=心は身体の動きに影響を与え得る)」という考え方です。言葉の意味としては、ボディーは「身体」、マインドは「心」、そしてシナジーは「相乗効果」といった意味合いですね。
私たちは生活の中で、しばしば心と身体が影響し合います。
例えば、怒っていたり不安なことがある時は、ついいつもより扉を強く締めてしまったり、語尾がきつくなってしまうことがありますよね。これはネガティブになっている心に、身体が影響を受けているパターンです。
逆に、風邪やケガ、片頭痛など、身体のどこかに不調がある状態のときは、なんとなくやる気が起きなかったり、何事にも必要以上に悲観的になってしまったりします。これは身体の状態に心が影響を受けているパターンです。
このように、心と身体は相互的に作用し、影響し合っていると考えられるのです。
心と体の考え方(2)ソマティック
心と身体のつながりについて議論するとき、しばしばキーワードとなるのが「ソマティック」です。
「ソマ(soma)」はギリシャ語で「身体」を意味しますが、これは「物質的な意味での肉体」というよりも「魂や心などを含めた身体」を表しています。仏教の「身心一如」という考え方と同様であると言っても良いでしょう。
つまり、肉体と精神は分けることなどできない一体のもので、一つのものの両面である、という考え方です。
アメリカでは1970年代頃、合理主義や物質主義的な価値観に対して、別の価値観を掲げる文化が生まれました。心と身体のつながりに注目する人が増え、「ソマティック」という概念が深まっていったのです。
ヨガや禅といった東洋思想が広まり、「心は心」「体は体」と分けて考えるのではなく、身体から心に・心から身体へと働きかけて健康を目指す方法がいくつも生まれました。
一方、現代の日本では、忙しい日々の中で心と身体のつながりはおざなりにされがちです。
社会人であれば、心がSOSを出していても、身体さえ動けば無理をして会社に行ってしまうこともあるでしょう。逆に、モチベーションが高い時には、疲労感を感じていても「ここまでやりきりたい」と無理をしてしまう日もあるかと思います。
しかし、身体が動いても心が壊れてしまっては、活動は継続することは難しいでしょう。また、心にどれほどやる気があっても、身体を壊してしまっては動けなくなってしまいます。
自分の人生を楽しく健康なものにするためには、分けることのできない心と身体の状態を意識して、時々はゆっくりとメンテナンスをすることが大切なのです。
心と体の考え方(3)東洋医学
東洋医学においては、心と身体は別物ではなく、相互的に作用し合っているものとして考えます。
「病は気から」ということわざが示すとおり、身体の調子が悪くなる原因は、身体のみにあるのではないということです。
現代の日本に生きる私たちは、物質的には恵まれた世界に生きていると言えます。
しかし一方で、精神的には毎日疲労し、ストレスフルな状態で生活をしている人も、少なくありません。これでは健康であるとは言えないのです。
また、東洋医学においては、感情(心)は個々の臓器とも深い関係があると考えられています。
例えば怒りっぽい人は肝臓が弱かったり、不安になりがちな人は腎臓系統に問題が表れやすいなどの特徴があります。
ネガティブな感情を我慢し続けてしまった結果、その良くないものが「石」や「腫瘍」として身体の中に溜まってしまうという場合もあるのです。
もちろんこれらは、遺伝的な要因や環境要因、その他の突発的な要因によって引き起こされる場合もありますが、それでは説明できない精神的な問題と考えられるケースも、医学の現場では数多くあるのだそうです。
ちなみに、東洋医学においては、風邪をひいたから風邪薬を処方したり、喉が痛いから喉の薬を処方するということはないそうです。
どうやって処方する薬を決めるかというと、なんと本人の性格や個性ををみてから決めるのです。そして、その内容から「どの臓器にどんな問題が出やすいか」を診断して考慮しながら、本人に合う薬を処方していきます。
風邪ひとつとっても、喉が弱く咳が出てしまう人もいれば、鼻が弱く鼻水が止まらなくなる人もいます。おなかの調子が悪くなる人もいますし、頭痛が先に出る人もいます。このように、人によって症状の出方が違うのは、それぞれの体質や性格、心の状態が違っており、それらが身体の不調と密接にか関わっているからなのです。
不調な人に訪れる、心と体のサインとは
ここまでお伝えしてきた通り、心と体は相互的な関係にあり、お互いに影響し合います。
それでは、実際にはどのような不調が表れた時に、相互的な影響を疑えばよいのでしょうか。
心に要因がある体調不良の例
身体の不調の原因が心にあるケースは、現代社会ではとてもたくさんあります。
その中でも、次のような症状は現代人によく見られる症状ですので、心のストレスが原因である可能性を疑ってみましょう。
- 不眠症
- めまい・吐き気
- 頭痛
- 胃痛
- 喉の違和感
身体に要因がある精神的な不調の例
心の不調の原因が身体にあるケースは、本人や回りの人が気付きにくいことがあります。
次のような症状が続く場合には、病院の受診を検討してみても良いでしょう。
- 抑うつ感
- 倦怠感
- イラつき・焦燥感
なお、身体の不調ではあっても、内科では原因が分からず精神科や心療内科で原因がわかることもありますので、複数の科を受診してみるのも一つの手段です。
心と体の関係のまとめ
今回は、心と体の関係についてお伝えしてきました。
前向きな気持ちでいることで、体が健康になり、寿命を伸ばす可能性もあると言われています。
また、健康なライフスタイルを維持することで、安定した健やかな精神状態を維持できるとも考えられています。
もしも今、体の調子が悪いと感じている場合はストレスを感じていないか、感じている場合はそれを軽減するにはどんな方法があるか検討してみると良いかもしれません。
心の元気が足りない日々が続いている場合は、まずは身体の健康状態を整える(栄養のある食事をとる、ゆっくりと睡眠をとるなど)ように意識することで、精神面も少しずつ安定してくる可能性があります。
心と身体のバランスを意識して、自分自身の個性や体質に合わせて整えていくことで、心身ともに健康にしていきたいですね。