最近よく聞くようになった「電磁波」という言葉。

あなたは、この電磁波が実際どういったものなのか、ご存知でしょうか。

一説では人体に悪影響を及ぼすとも言われていますが、実は電磁波は生活の中にありふれているものでもあります。

今回の記事では、電磁波の正体と、それが私たちの身体にどのような影響を与えるのかを、解説していきます。

電磁波とはなにか?種類や性質の違い

電磁波とはなにか?種類や性質の違い

「電磁波」と一言で言っても、実は様々な呼称や特徴があります。

まずは電磁波の種類について見ていきましょう。

電磁波の種類

電磁波には様々な種類があります。

病院でレントゲン撮影を行なう際に用いられているのは、エックス線を使った「放射線」。テレビやラジオ、スマホなどに利用されているのは「電波」。その他にも様々あるものの総称が「電磁波」なのです。

ちなみに、私たちが日々浴びている太陽の光や赤外線なども、電磁波なんですよ。こうして見ると、一概に「身体に悪いもの」とは考えにくく、また生活の中で電磁波のすべてを避けるのは難しそうですね。

電磁波の性質と周波数

電磁波の性質は、周波数の高さによって異なります。

たとえば、主に医療に使われるエックス線やガンマ線のような「放射線」の周波数は、3千兆ヘルツ以上もあります。この放射線は非常に大きなエネルギーを持っており、大量に浴びると遺伝子を傷つけてしまう可能性があるため、注意が必要です。

逆に、送電線などの電力設備からは、周波数が50ヘルツと極めて低い電磁波が発生しています。その波長はなんと6,000km!もはや「波」と言えないような長さですよね。波として考える必要がないことから「電磁界」と称されています。「電磁界」は先ほどの「放射線」とは違い、持っているエネルギーがとても小さく、遺伝子を傷つけたりする心配はありません。

なお、電磁波のうち、周波数が3テラヘルツ以下のものは「電波」と呼ばれます。電波もまた、周波数によって性質が違いがあるため、周波数に応じた様々な利用方法があります。

たとえば、放送・通信分野、気象予報の分野、医療の分野などです。私たちが日常で使うものとしては、スマホはもちろん、電波をエネルギーとしている電子レンジや、Suicaのような無線ICカード、カーナビゲーションシステムなどにも応用されています。

電磁波が人体に及ぼす影響

電磁波が人体に及ぼす影響

電磁波には様々な種類があり、周波数の高さによって性質が異なることが分かりました。

中でも、電波が人体に与える影響については、50年以上ものあいだ世界の国々で研究がすすめられ、そのデータや成果が蓄積されてきました。そんな膨大なデータと科学的知見をもとに、電波がはっきりと人体に影響すると確認されている作用が2つあります。

電波の影響①刺激作用

電波があたっている金属に触れたときに、ぴりぴりっと感じることがあります。これが電波による「刺激作用」です。

この作用は周波数の高さと関係していて、数十ヘルツくらいのとても低い周波数で感じやすいのだそうです。数百キロヘルツにもなるとほとんど感じなくなるため、電波の周波数が高くなれば高くなるほど、刺激作用は薄れていきます。

なお、このように電流が流れて弱い刺激を感じること自体は、特に危険ということはありません

電波の影響②熱作用

電波が人体に直接当たった場合、一部は反射され、一部は人体へと吸収されていきます。

では、吸収された電波はどうなるのでしょうか。実は、電波のエネルギーは熱となって、体温を上昇させることが分かっています。このように、体温が上昇することで起きる生態作用を「熱作用」と呼びます。

熱作用も、電波の周波数によって多少の差があるようです。数百キロヘルツより高い周波数の電波の場合、刺激作用は弱くなるために熱作用が主となります。

なお、約1℃以上深部体温が長い時間上昇するという状況では、生態に悪影響を与えると言われています。しかしこの状況に陥るには、全身に1kgあたり約4Wというとても多くの電波を吸収する必要があり、一般的な生活の中ではほぼあり得ないようです。

スマホや携帯電話などに使用されている電波は、熱作用が主な影響ですが、「電波防護指針(※)」によって人体に影響が無いような強度になるように定められているそうです。

※電波防護指針とは……電波の人体に対する安全性の基準のこと。人体への影響を考慮した十分に安全な値とされていて、国際的な指針とほぼ同じ値となっている。日本では平成2年と平成9年にまとめられ、平成27年と平成30年に改定された。

電磁波に関する各機関の見解

世界保健機関(WHO)では、「国際的なガイドラインを下回る強さの電波により、健康に悪影響が発生する証拠はありません。」と明文化されているようです。スマホや携帯電話の端末、そして携帯電話基地局からの電磁波によって、がんが誘発されたり、脳の活動や睡眠といった健康への重大影響はないとのことです。

また、日本の総務省では、生体電磁環境研究促進委員会の中間報告として、次のように発表しているそうです。

我が国をはじめ国際的な専門機関では、電波防護指針を下回る強さの電波によって健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められないという認識で一致している

参考ページ:総務省|関東総合通信局|電波が人体に与える影響について

電磁波についてのまとめ

電磁波についてのまとめ

今回の記事では、電磁波の正体と、電磁波が人体に及ぼす可能性のある影響についてご紹介しました。

医療や通信など幅広い現場で利用されている電磁波ですから、使い方を間違えなければ、極端に神経質になる必要はなさそうです。

5Gの普及など、これからも技術の進化とともに電波・電磁波の活用シーンが変化していく可能性も十分にありますので、上手に付き合っていきたいですね。